2022年ベスト3に入る一冊。とても面白かったです。
現職では、ソフトスキルとしての論理思考能力を非常に大切にしています。『ロジカルプレゼンテーション――自分の考えを効果的に伝える戦略コンサルタントの「提案の技術」』は、全社員対象の推奨書籍としており、実際に多くの社員が読んでいます。
『ロジカルプレゼンテーション』では、論理的に考えられているかの判断材料として「縦の論理」「横の論理」という言葉が出てきます。
縦の論理とは、「xxxだからyyy」という仮説に対する論理が通っているかを表します。横の論理とは、「要素を正しく洗い出せているか」を表します。
「本当にそうなの?」と自問自答することで縦の理論が、「本当にそれだけなの?」と自問自答することで横の理論が通っているかを確認し、ブラッシュアップすることができます。
『解像度を上げる』は、『ロジカルプレゼンテーション』の上位互換のような内容でした。
「解像度が高い状態」とは、顧客像がはっきり見えていたり、ネクストアクションが具体的で明確な状態と定義されています。
著者によると、解像度が高い人は「深さ」「広さ」「構造」「時間」の4つの視点を持っているといいます。
ロジカルプレゼンテーション風にいうと、「深さ」は縦の論理、「広さ」は横の論理、「構造」が情報を正しく構造化し整理できているかで、この3つでロジックツリーの完成となります。
さらに、ロジックツリーの時間軸の変化を考えられているか、それが4つめの視点「時間」です。
著者曰く、解像度を上げるために一番重要なのは「深さ」だそうです。「解像度が低い」状態の時、足りないのは大抵が深さらしいです。
では、「深さが足りている」とはどんな状況なのか。
1つの事象に対して「so what?」を8〜10回繰り返すと十分と著書は言います。so what? を8〜10回というのは、ロジックツリーが8〜10段になっているということです。
トヨタ生産方式で「なぜなぜを5回繰り返すと真の原因に辿り着く」というのがありますが、同じ発想ですね。
ロジカルプレゼンテーションの縦の論理では、論理が通っているか?しか見ていませんでした。ただ、論理が通っていても、深さが足りないと安直な解決策しか出せません。
「論理が通っているか」、「適切に深掘りできているか」、この2点が揃って初めて課題に対して有効な打ち手となる確率が高まります。
「解像度上げるにはまず深さ」の視点は、早速実務においても役に立っています。
先日公開した『開発生産性 Advent Calendar2022』の記事『コード品質?レビュー効率?いや、PR数だ!!!』は、本記事執筆時点で169ブクマ・はてぶのホットエントリーにも入り多くの方に読んでいただけました。 paytner.hatenablog.com
この記事、自分史上ぶっちぎりNo.1で完成させるまでの時間がかかりました。その理由は、まさに「解像度の低さ」にあったと思っています。
半年間のチームの取り組みを、定量・定性両面で分析して一つのストーリーに組み上げる作業が必要でした。これまで、定量的な指標ベースでの振り返りをほとんどできていなかったので、半年分の振り返りを一気にやらなければなりませんでした。
定量指標が上がった or 下がった理由は何なのか?改善施策は効いたのか?現場で働くメンバーの開発者体験等の定性評価はどう変化してきたのか?
これら全ての「深さ」が足りなかったためにとても時間がかかったわけですが、逆に言うと「深さが足りていないからうまく書けない」と自覚できたことで、適切に解像度を高めるアプローチをとることができました。
他には、メンバーのテックブログやドキュメント系のレビューにおいても、「なんだかしっくりこないな、、」「論理的にはつながってるけど、何がが足りない」と感じる時、足りないのは大抵「深さ」です。フィードバックする側がこれを自覚できているかいかいかで、フィードバックの質は大きく変わります。
『ロジカルプレゼンテーション』+『解像度を上げる』で、論理思考に対する理解度( = 解像度)がかなり高まりました。
よい本と出会えました。
(参考)
NewsPics有料会員限定にはなるのですが、こちらの記事(【新】「解像度が高い人」が持っている4つの視点)で本の内容がとても簡潔に分かりやすくまとまっていました。